バレーボール女子日本代表チームは、アテネオリンピック前哨戦とも言える7月のワールドグランプリ(WG)で、決して成績は良くなかった。そのときの柳本監督のコメントは「WGではいろいろ試している。オリンピックでは全く違う形のチームになる。」というものだった。一度だけではなく、何度となくそういう説明を繰り返していた。
この言葉は、額面通りに受け取っていいのか、単に言い訳をしているのか、判断がつきかねる部分があった。
そして、今、アテネオリンピックが行われているが、日本女子は、マスコミが煽ってきたようなメダルを狙うほどの成績は全く残せず、敗退しようとしている。では、やはり上記の柳本監督の言葉は単なる言い訳なのか。それにしても、5月のオリンピック世界最終予選における日本の好成績は何だったのか。何か理由があるのではないか。
その理由の一つを説明する記事を見つけた。それは、2004年8月11日付、IT Media Newsの「メダル狙う全日本女子、"データバレー"の裏をかけ!」(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0408/11/news053.html)というものである。
この記事の主旨は、こうである。つまり、今のバレーボールは、PCを使ってリアルタイムに試合を分析し、作戦に反映させている。それを「データバレー」と呼ぶらしい(分析用ソフトウェアの名称そのものも「データバレー」とのこと)。このデータバレーを最も得意とし、最も緻密に実行しているのがイタリアであるが、日本も含めて、世界のナショナルチームはすべて、多かれ少なかれ、このデータバレーを導入している。このデータバレーは、試合中の選手の動きをコード化してすべて入力する。そして、過去のデータに基づいて分析を行い、作戦を決定し、1ゲーム毎、1セット毎、1プレー毎に、敵の最も弱い部分を突く戦術を取る。
データバレーの普及に伴い、一度試合で見せた攻撃パターンは、二度・三度とは通用しなくなってきた。これで、5月のオリンピック世界最終予選での日本の好成績の説明がつく。日本は、最終予選の対イタリア戦で、木村沙織や大友愛など相手がデータを持っていない新人選手を投入し、イタリアのデータバレーの撹乱に成功し、金星をあげた、とこの記事は伝える。
そういうことだったのか。
つまり、この日本のデータバレー撹乱戦術は、5月には成功したのだが、その手は二度目には通用しないのである。選手のクセや攻撃パターンや弱点などを、実際に大会毎に変えることには限界がある。
そこで、日本女子チームは、「オリンピックでは全く違う形のチームになる」ための努力をすると同時に、マスコミ等を通じてそのメッセージを伝える必要があった。それは、チームをサポートしてくれる日本のファンに向けてというよりも、日本の動向を分析しているに違いない他国代表チームに向けて。世界最終予選とワールドグランプリでのデータが役に立たないかもしれないと、オリンピックでの対戦相手が少しでも迷いを持ってくれることを期待して。
結果は、前述の通りである。データの裏をかくことも、そう簡単ではない。
(c) 2004, bskklog.
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