今年の夏は、ジョージ・ルーカスの「スターウォーズ エピソード3 シスの復讐(Star Wars: Revenge of the Sith)」や、H.G.ウェルズ(Herbert George Wells; 1866年9月21日 英国Kent州Bromley生まれ)による原作の映画「宇宙戦争」など、SF大作が公開されるが、SFといえば、忘れてならないのは、「宇宙大作戦」だろう。
もちろん、TVシリーズ「スタートレック(Star Trek)」のことだが、これが日本のTVで放送されるときには「宇宙大作戦」というタイトルになっていた。米国では1966年から放送が開始されたとのこと。
私がこれをいつ頃TVで見たのか、今となっては記憶が不確かである。また、それが日本で何度目の再放送であったのかも不明確である。まだビデオがない時代なので、録画しておくことはできなかった。深夜時間帯によく放送されていたが、子供だった私には、放送開始時間まで起きていることも困難で、見逃した回も多い。
とにかく、他のTVドラマとは決定的に違う特異な作品だったため、それを見たときの衝撃は大きかった。「U.S.S. Enterprise」という名の宇宙船(米軍に同名の空母が実在したが、この空母の名前をもとに宇宙船の名前を付けたのではなく、逆に、ドラマに登場した宇宙船の名前を米軍が拝借したと聞いたことがある)が航海しながら、行く先々でのエピソードがほぼ毎回一話完結になっているのだが、根底にあった思想は「平和の追求」であった。
このTVシリーズが作られたのは、まだ米国とソ連という二大大国を中心とする東西冷戦が存在していた時代。そういう背景の中で、理性や論理を重んじることが理想として描かれていた。そして、ある意味その象徴としての登場人物だったのが、レナード・ニモイ(Leonard Nimoy; 1931年3月26日生まれ)が演じる「ミスター・スポック」。
ただし、宇宙もののSFとしては戦闘シーンはやはり不可欠で、敵との戦いは、武器を使って、あるいは時には素手での殴りあいなどといった形で描かれていた。殴り合いなどは、スポックではなく、専ら、ウィリアム・シャトナー(William Shatner; 1931年3月22日生まれ, カナダ・モントリオールの出身)が演じる主人公の「カーク艦長」の役割だった。
ミスター・スポックは宇宙人という設定。身体的特徴としては、耳が尖がっていた。
U.S.S. Enterpriseの乗組員(特にブリッジにいる人々)には、そういう設定だからなのだが、マイノリティの役者が多く使われていた。アフリカ系、ロシア系、アジア系など・・・。まあ、それも、その時代における米国の理想主義的方向の反映である。
出演者の一人であったジョージ・タケイ(Geroge Takei; 1937年ロサンゼルス生まれ)は、「スールー(Captain Sulu)」という役(但し、日本語TV版では「ミスター・カトウ」となっていた)で人気を得たが、このタケイ氏自身が実際に、日系人であるというだけの理由で第二次世界大戦中には強制収容所に収容されていたという経験を持つ。そういった、米国が背負う歴史的負債からの脱却も含めての理想主義であった。
まあ、そんな「宇宙大作戦」のオリジナル版も、最近ではTVで全く放送されなくなってしまったが、2004年にはDVDで発売されていたようである。
宇宙大作戦 GALAXY BOX
本編79話に加えてパイロット版も含んだ計80話収録で、DVDは22枚。価格はちょっと高いが、ファンならば保存盤として持っておきたいところかもしれない。
ところで、TVで放送されるときに、そのテーマ音楽も特徴があり、印象的なものだった。
そのテーマ曲は、デオダート(Deodato)による「スタートレックのテーマ(Theme from Star Trek)」。デオダートはブラジル生まれで、米国に渡って活動したミュージシャン。後にアース・ウィンド・アンド・ファイアー(EWF; Earth, Wind, & Fire)の「太陽神」のプロデュースも行なう。私がDeodatoという名前を知ったのは、オールナイトニッポンでタモリがこのDeodatoの「スタートレックのテーマ」をかけたときだった。
番組開始時の映像と、このテーマ曲とが非常にマッチしている、質の高いものだった。
「スタートレックのテーマ」は、今売られているCDでは、「ヴェリー・トゥゲザー(Very Together)」の第7トラックに収録されている。
Very Together / Deodato
あとは、特筆すべきものは、上にも書いたジョージ・タケイ氏の著書「To the Stars」。これは、氏の自伝であり、強制収容所での経験も書かれているとのこと。原書は1995年に米国で出版されたのだが、日本語版が2005年5月に出された。ジョージ・タケイ氏は、この日本語版の出版に合わせて来日し、講演会やサイン会を行なったようである。
To the Stars / George Takei
「星に向かって」(日本語版)
関連ブログ記事など:
唇からナイフ: DEODATO/VERY TOGETHER
Zwecklos sterben:ミスタースポック萌え
Metallic Black » ジョージ・タケイさん(Captain Sulu)サイン会
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