ターミナル(The Terminal)/トム・ハンクス主演
映画「ターミナル」(The Terminal、2004年米国作品)を、DVD(2005年4月28日発売)で見た。
評価は、5点満点中、3.5。
スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の作品で、主演はトム・ハンクス(Tom Hanks)。そして、相手女性となる航空キャビン・アテンダントのアメリア・ウォレン役には、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(Catherine Zeta-Jones)。
クラコウジア(という設定上の国)から米国JFK空港に到着したビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)は、入国管理官から「You are a citizen of nowhere」と宣言されてしまう。つまり、米国に入国することも、祖国に帰ることもできない。
実は、このストーリーは、実在の人物がモデルとなっている。
イランと英国の混血で、イランを国外追放されたマーハン・カリミ・ナセリ(Merhan Karimi Nasseri)という男性が、1988年、英国に入国しようとしたが、盗難にあったためにパスポートがなく、英国入国を拒否された。
そこでナセリは、フランスのシャルル・ドゴール空港に向かったのだが、ここでも彼は、「無国籍」ということで空港から出ることを禁じられ、ターミナルに居続けざるを得なくなる。
そして、この実話に基づき、映画「パリ空港の人々」(1993年、原題は「Tombes Du Ciel」)が作られた。
今回のスピルバーグ監督の「ターミナル」は、この人物の置かれた状況を使いながら、それに、このビクターのアメリカに対するある「想い」(これが、ラストシーンの感動につながっていく)を絡めて、上手く作品としてまとめている。
スピルバーグ監督の言葉によると「Life is Waiting」(人生は待つこと)だとか。
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到着当初、ビクターは、簡単な英語さえも理解できない。
それから、ガイドブックを読んだりしながら、段々と英語が上達していく。
空港ロビー内のカートを集めて小銭を稼ぐ術も覚える。
そうしているうちに、空港内で働く人々とも仲良くなり、空港内にビクターの「ファン」も増えていく。
インド系の清掃夫グプタ・ラジャン(クマール・パラーナ, Kumar Pallana)は、最初、ビクターのミール・バウチャーを「ごみ」として捨ててしまうが、最後には、自らを犠牲にしてビクターの米国入国に協力する。
面白いのは、機内食運搬係のエンリケ・クルズ(ディエゴ・ルナ, Diego Luna)と女性入国審査官のトーレス(ゾーイ・サルダナ, Zoe Saldana)との絡み。
ビクターは、米国入国のわずかな可能性にかけて、毎日毎日、トーレスのデスクを訪れる。トーレスに恋するが自分で声をかける勇気を持たないエンリケは、ビクターに食事を与えるかわりに、ビクターを通してトーレスのことを聞きだそうとする。
そこでわかったことは、トーレスはときどき「コンベンション」(日本語字幕では「大会」)に出かけるということ。コンベンション? エンリケは少しだけ考えて、そして叫ぶ「She's a Trekkie... She's a Trekkie! 」。
このあたりは、何故か、日本語字幕ではきちんと訳されていないのだが、ここは、TVシリーズ「Star Trek」が引用されている。
そして、最後のほうで、トーレスがエンリケのプロポーズを受けるシーンがある。
エンリケが待っていると、トーレスが現われる。
トーレスは、左手の人指し指と中指をくっつけて、薬指と小指をくっつけて、そして中指と薬指を話した状態(つまり、Star Trekの中で、バルカン星人が行なう挨拶である)で手のひらを掲げる。そしてその手のひらを返すと、エンリケから贈られた指輪がはめられている。
何故か、スピルバーグ監督は、この映画の中で「Star Trek」を引用した。「宇宙戦争」を撮るための布石だったのか?
それはともかく、ビクターが、なぜわざわざ米国にやってきたか。そして、何のために空港内で何ヶ月も待っているのか。
その秘密は、彼が持ってきた1個の缶の中に隠されている。最後には、ベニー・ゴルソン(Benny Golson自身が本人役で登場)との対面。
状況設定の面白さと、登場人物の人間模様、この映画のためだけに作られた空港ターミナルの広大なセット(空港ロケではない)が見どころ。あまり、感動を期待してはいけない。ビクターとアメリアとの絡みは、いまいちかも。
Amazon.co.jpより;
工事中の区画に寝場所を確保し、小銭を集める方法を学ぶなど、ビクターのサバイバル生活がテンポよく展開。ハンクスの演技は、ときとして大げさだが、英語もまともに話せないビクターの喜怒哀楽を観る者に分かりやすく伝えてくれる。不倫に悩む客室乗務員と彼のロマンスや、フードサービスや清掃員など周囲の人々のエピソードにも心温まるが、本作で最も印象に残るのは、セットで作られたターミナルだろう。その巨大さはもちろん、細かい部分まで本物の空港に引けを取らないリアルさ。クライマックスには、スピルバーグらしい、ややクサめの感動が盛り込まれるが、全体を通して笑いと涙、シビアな現実と夢物語が巧みに交錯し、観ていて飽きない作りになっているのは、さすがだ。
主な出演者:
トム・ハンクス Tom Hanks as Viktor Navorski
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ Catherine Zeta-Jones as Amelia
スタンリー・トゥッチ Stanley Tucci as Frank Dixon
チー・マクブライド Chi McBride as baggage carousel attendant
ディエゴ・ルナ Diego Luna as Airport employee
バリー・シャバカ・ヘンリー Barry Shabaka Henley
ゾーイ・サルダナ Zoe Saldana as INS agent
エディ・ジョーンズ Eddie Jones
ヴァナ・ボンタ Vanna Bonta as Airline PA Agent
バリー・ジュリアン Barry Julien as Co-pilot
ボイド・ケリー Boyd Kelly as Pilot
ダン・フィナティ Dan Finnerty as Cliff, the Discovery Store Manager
マーサ・ニーヴィル Martha Neavill as Swahili Mom
クマール・パラーナ Kumar Pallana as Gupta Rajan
コンラッド・プラー Conrad Pla as CBP officer #
メル・ロドリゲス Mel Rodriguez as Man in Cast
ミック・スクライバ Mik Scriba as Worker
ターニャ・ヴァン・ブロックランド Tanya van Blokland as Passanger #3 (Dutch)
ベニー・ゴルソン Benny Golson as Benny Golson
関連ブログ記事:
Diarynote: 「ターミナル」
Diarynote:「ターミナル」に隠された意図 その1
Diarynote:「ターミナル」に隠された意図 その2
Diarynote:「ターミナル」に隠された意図 その3
利用価値のない日々の雑学: ターミナル
関連サイト:
Memorable Quotes from The Terminal
Trekkie
2005年7月6日 追記
上にも書いた ディエゴ・ルナ(Diego Luna) は、2005年7月9日に日本で公開される映画「ダンシング・ハバナ」(2004年米国作品;1958年のキューバが舞台になっている)で主演(キューバ人のハビエル役)している。
© 2005, zig zag road runner.
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Comments
トラバありがとうございました☆
さっそく私もトラバさせていただきました。
そうなんですよね~
これ実話なんですよね~びっくりです!
しかも確かこの実在の人って今も
空港にいるって聞いたのですが本当なんでしょうか?
Posted by: バブルス | Monday, July 04, 2005 17:48
スタートレックについての伏線。
そのような意味があったのですね。へぇ~。
Posted by: sohroh | Monday, August 15, 2005 03:12