大相撲春場所、大関・白鵬が優勝
予定調和的要素を排除したガチンコの対決というのは、意外と、こうなるのが自然なのかもしれない。
今日(2007年3月25日)は、大相撲春場所の千秋楽。週刊現代の大相撲八百長報道を受けて、ピリピリした展開になった今場所であったが、今日の結果は、その影響も微妙に受けていたような気もする。
初日、2日目と連敗した横綱・朝青龍は、その後、12連勝して、12勝2敗と盛り返していた。12勝目は、土曜日に大関・白鵬との対戦であげた白星だった。土曜日に12勝2敗同士で並んだ朝青龍と白鵬、優勝慣れしているという点では、朝青龍のほうが有利かと思われた。
白鵬は、土俵際で待つ間、じっと目を閉じて瞑想しているかのような姿勢をとる。「静」の気迫を感じる。
今日の取り組みでは、白鵬が琴欧州をすくい投げで破って、13勝目。そのまま、朝青龍と千代大海との対戦の結果を待つ。
朝青龍は、もし優勝すれば、今の相撲の優勝制度が出来て以来初めてとなる、初日、2日目の連敗からの優勝。それをやってのけても不思議ではない強さを持っている。一方で千代大海は、7勝7敗で千秋楽を迎えており、朝青龍にとっても気を抜けない相手。どういう取り組みになるのか、と思う間もなく、立会い直後、朝青龍が変化を見せて千代大海をはたき込み。場内ブーイングの中、朝青龍は、懸賞金を手にすると表情を変えることなく支度部屋に戻っていった。つまりは、非難覚悟で勝ちにきたわけである。
13勝2敗同士で、優勝決定戦。
白鵬は、相変わらず、落ち着いた表情の中で何かを考えている。塩を持った朝青龍を待たせたまま蹲踞の姿勢を長時間維持したり・・・ どういう戦いになるのか。朝青龍は、いくら勝ちたいとはいえ、いくら昨日不利な展開を強いられたとはいえ、千代大海に対してとった戦術は、もう決定戦では取れない。制限時間が近づくにつれて、両者の顔がだんだんと険しくなる。
そして、時間いっぱい、立会い、その瞬間、何と、白鵬は少し腰を引き気味にすると、前のめりに突っ込んでくる朝青龍の体をグッと下に押した。朝青龍の体は残って立ち直ったのだがその前に、一瞬、朝青龍の左手が土俵を掃いていた。行事が軍配を上げる。白鵬は、その瞬間、小さなガッツポーズ。白鵬の2度目の優勝が決まった。
朝青龍は、怒らず、微笑んで、そのままの表情で花道を引き上げていった。報道陣に対しては「こんなもんだよ」。
白鵬は、NHKによる優勝インタビューで、あの立ち方をいつ考えたのかと聞かれて「とっさに」と答えていたが、私には、どうも、あの長い瞑想の間の葛藤の末、その手を使ってでも勝ちに行くことを決断したように思えてならない。朝青龍の優勝へのこだわりを目の前で見せられた以上、自分もそうあるべきであると。
© 2007, zig zag road runner.
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