読書記録
久々に、読んで興奮する本に出会うことができた。
知的好奇心を満たしたい人にお勧めの本。眼から鱗が落ちること間違いなし。5億4300万年前に我々生物が最初に視覚を得たときのように。
実は「カンブリア爆発」という言葉を知ったのは比較的最近なのだが、それは、遺伝子の突然変異の量が偶々増えたことによって起こったわけではなく、あるきっかけに基づく因果関係をもって起こったらしいという話。
その学説を唱えた人が、この本の著者であるアンドリュー・パーカー。1967年生まれ、英国人生物学者である。
この本のタイトルが暗示するように、カンブリア爆発は、生物の視覚が大きく関係している。
そもそも、生物が視覚を得ることができたのはいつで、どのようにそれが可能だったのか。あのダーウィンですら、進化によって眼が誕生したことに、自信がもてなかったらしい。
この本は、学術書ではなく、一般人向けに書かれている。平易な言葉で解説されている。しかも面白い。そして、推理小説のようである、とまでは言わないが、第8章~第10章あたりの結論に至る前まで、様々な状況証拠を周辺から着々と積み上げる記述がある。
1980年代に、科学雑誌で、生物の「擬態」の意味が取り上げられていた。「擬態」が、生物の進化においてこれほどまでに重要な役割を果たしているとは、その時点では理解できなかった。世の中的にも、「擬態」は、学術的意味というよりは、博物学的に風変わりな事象という程度にしか捉えられていなかったように記憶している。
そして、光の重要性、視覚の重要性も、同様。
この本を読んだ後では、それが当然のように思えてしまう、ある意味コロンブスの卵的な、といっても進化論的には非常に重要なこの学説。
アンドリュー・パーカーがこの学説を最初に講演したのは2000年とのこと。そして、原著が出版されたのが2003年。やや遅れはしたが、日本語でたった数年遅れでこれを読めたことは、非常に幸せであると思う。
翻訳者の渡辺政隆氏および今西康子氏にも感謝。読みやすい日本語になっている。
繰り返しになるが、お勧めの本である。
眼の誕生/アンドリュー・パーカー
In the Blink of an Eye / Andrew Parker
(The Cause of the Most Dramatic Event in the History of Life)
草思社, ISBN 978-4-7942-1478-2
原書はこちら↓
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